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音とダンスのパフォーマンス「浜楽」を開催致しました。

2018年05月22日 / 今日のTIMA

山田安紀(伊東豊雄建築ミュージアム)

伊東豊雄さんが設計した岩田健母と子のミュージアムで音とダンスのパフォーマンス「浜楽」を開催致しました。
サウンドアーティストの鈴木昭男さんとダンサーの宮北裕美さんをお迎えし、この日にしか出会えないパフォーマンスをしていただきました。

©Atushi koyama

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パフォーマンスは、石を二つ重ねたカスタネットのような楽器「ヌトゥ」の音から始まりました。宮北さんがゆっくりと会場を歩きながら、石のはじける音を奏でます。

鈴木さんは宮北さんと呼吸を合わせるように石笛を奏でると、お二人の世界がどんどん作られていきました。
鈴木さんも来場者の間を縫うように歩きながら、じっくりと会場中に音を響かせていきます。
石笛は素朴な音でありながら、会場を包みこむような大らかさに溢れ、音が地面や空気から体に伝わってくるようでした。

©Atushi koyama

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しばらく経つと、鈴木さんが「やまびこ」から発想を得て作った楽器「アナラポス」が演奏されました。
アナラポスは筒と弦で構成された楽器で、弦を引くと何重にも音が重なり合い、しずくが落ちるような軽やかな音や鈴木さんが声を吹き込むと龍の鳴き声のような高音が響きます。空気に音が伝わる様子が体感で感じることができる不思議な楽器でした。

©Atushi koyama
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ヌトゥが一定のリズムを刻み、アナラポスの響きに合わせて、宮北さんの体がしなやかに動きだし、生き生きと躍動感にみなぎるパフォーマンスに惹きつけられます。
ぐっと手を空に向けたり、軽やかに飛んだり、彫刻と寄り添ったり、まるで彫刻の子ども達と遊んでいるような印象を受けました。

お二人はパフォーマンス中に視線を交わすことはなく、お互いの気配を感じながら、約40分間の息の合ったパフォーマンスを終えました。

演奏後は、出演者の鈴木さんと宮北さん、今回のパフォーマンスを企画をしてくださった玉重さん、そして建築家の伊東さんが加わり、玉重さんの進行のもとアフタートークを行いました。

©Atushi koyama

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 玉重さんからは、今回の企画について「このミュージアムや中野本町の家を訪れて、音が巡るのを体感し、伊東さんの建築は楽器のようだと思った。音を作ってくださる方をお招きし、何かできないかと思ったのがきっかけです。」とお話しいただきました。

 鈴木さんは独自のパフォーマンスをするきっかけとなった「耳を澄ますこと」の大切さについて、
「自然を師匠にして学びを始めたのが自然の音を聴くきっかけになった。東京から丹後半島に移り住み、そこで一日自然を聞くことを行った。太陽が昇る前に、いつもの席に座ると、それまで気づかなかった蚊の羽の音が耳元で「ブーン」と聞こえて、首をちくっと刺された。この体験が悟りを開くことになりました。かゆいとか、鳥のさえずりなどを人は言葉に置き換えて感じてしまう。言葉に置き換えない聴き方を考えて、木のように、ただその場所に居続けるだけでいいのではないかと思い始めた。」とお話しをしてくださいました。

©Atushi koyama

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宮北さんは今回のパフォーマンスについて、「私が踊ることで、自然や風景、建築、訪れた人が見えてくるような存在でいたいと思いました。建築に入ると空が抜けて見えたり、風、波の音を強く感じました。彫刻達が私に色んな形を与えてくれて、美術館の彫刻と対話をしながら、パフォーマンスができました。」とお話しくださいました。

今回の色鮮やかな衣装は、みかんの花の時期に開催ということで、柑橘の黄色、みかんの花の白、大三島の空と海の青をイメージして選ばれたそうです。

©Atushi koyama

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伊東さんはイベントについて、下記のように感想を述べられていました。
「彫刻が一生懸命、見て聞いているように思えた。それがとても印象的。宮北さんと彫刻が対話をされているように思った。
実はこの時間が一番眠くなる時間で、僕はコンサートでも最初は寝てしまうのですが、今回は始めから眠りの中にいて、眠りの中から呼びさまされる印象。はっと起こされるのではなく、すーっと自分が覚醒される気分だった。遠くから聞こえてくる音もあり、大地とも対話しているような音だった。コンサートや音楽を当たり前に受け入れて聞いているが、このパフォーマンスはそうではなく、人の声なのか、自然の中から音が聴こえてくるのか、その境界が存在しないような印象を受けました。」

©Atushi koyama

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最後に玉重さんから「鈴木さんの石笛は先祖伝来の楽器です。大山祇神社の宝物館に源義経の甲冑が奉納されているのですが、彼が牛若丸と言われていた時に、鈴木さんの祖先の所にいらして、牛若丸の前で石笛を吹かれたそうです。ご縁があって、大三島でご一緒できたのだと思っています。時間が超過してしまいましたが、本日は本当にありがとうございました。」とご挨拶をいただき、閉幕しました。

「浜楽」は「浜辺の近くで音を楽しんでほしい。」という意味で鈴木さんと宮北さんが名付けてくださいました。
今までに体験したことのない、新しい音やダンスの発見は豊かな自然に囲まれた大三島で感性を研ぎ澄ますことで、実感できたのではないかと思います。音とダンスと一緒にお二人の一つ一つの所作や間、あの時起こったことが全てが作品のように感じるパフォーマンスでした。

ご来場いただきました皆様、どうもありがとうございました。